ペギー
※本作はChatGPT - GPT-5.5を使用しています。
商店街のはずれに、ペギーという名前の古い証明写真機があった。
厳密に表現するならば、証明写真機の側面に、誰かが白色塗料でPEGGYと書いたのである。いつ書かれたのかはわからない。雨で半分流れて、PとGのあいだに苔が生えていた。わたしはそれを見て、ペギーはもうかなり歳をとっているのだな、と思った。
ペギーは駅前の再開発から取り残された空白地帯に立っていた。隣には閉店した靴修理屋があり、向かいには何も入っていないガチャガチャの筐体が三台並んでいた。ガチャガチャは空なのに、風が吹くたびに中で何かが転がる音を立てた。わたしはそれを少し嫌だと思った。
ペギーの利用者は、近年著しく減少していた。スマートフォンというものが普及したせいである。人々は自身の顔面を何度も撮影し、気に入らなければ削除する。ペギーはそういうことを許さない。硬貨を入れ、カーテンを閉め、青白い光に照らされると、こちらの準備など待たずに勝手に撮る。したがってペギーの写真は、だいたい犯罪者か、これから犯罪者になる直前の人間のように写る。証明とは、たぶんそういうものなのだろう。
ある水曜日、わたしは履歴書に貼る写真が必要になったので、ペギーに入った。
中は思ったよりあたたかかった。ビニールの椅子は少し傾いていて、座ると右の尻だけが沈んだ。壁には「背筋を伸ばしてください」と書かれている。
硬貨を入れると、機械の奥から咳払いのような音がした。
フラッシュが光った。
一枚目の写真には、わたしの後ろに知らない老婆が写っていた。灰色のワンピースを着て、わたしの肩越しにこちらを見ていた。目つきが悪く、口もとには、何か言いかけて途中でやめたようなしわがあった。
「誰」
とわたしは言った。
また足もとからレシートが出てきた。
ペギーです
とあった。
わたしはカーテンを少し開け、外を見た。商店街には誰もいなかった。靴修理屋のシャッターに貼られた求人募集の紙だけが、風でぺらぺら鳴っていた。
「あなたがペギーなんですか」
とわたしは機械に聞いた。
機械は黙っている。
証明写真が四枚、ゆっくり排出口から出てきた。二枚目の写真では、老婆はわたしの隣に座っていた。三枚目では、わたしの顔が老婆に少し似ていた。四枚目では、老婆だけが写っていた。わたしはいなかった。
不愉快であった。自分の写真を撮りに来て、知らない老婆の写真を持たされるのは、かなり不愉快である。しかも履歴書に貼れない。
「困ります」
とわたしは言った。
足もとからレシートが出た。
当方も困惑中
と、書いてあった。
わたしは履歴書用の写真を断念し、排出口から出てきた老婆の写真を一枚だけ鞄に入れた。
「持っていきます」
とわたしは言った。
「忘れたら困るでしょう」
ペギーは何も言わなかった。
外に出ると、商店街は夕方になっていた。空は薄い桃色で、空っぽのガチャガチャの中から、また何かが転がる音がした。わたしはその音を聞きながら、老婆の写真を取り出して見た。
翌週、新しい証明写真機が置かれていた。画面が大きく、肌をきれいに補正でき、撮り直しも三回まで可能だった。
わたしはずっと鞄の奥にペギーの写真を入れているが、とくにお守りになるわけでもない。