みそきんを食べた日
ローリー・ムーア。散漫な回想録のような短編にさしかかって、面白くない。
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claudeのアイコンのシンボルマークが尻の穴に見えて仕方がない。
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労働を終えたあとほとんど空白の状態で彷徨うようにコンビニに吸い込まれるのはいつものことである。そうしてしばらく棚を物色するでもなく、というか棚を見ているようで見ておらず、はやく帰ればいいのに幽霊のように巡回していた。さいわい深夜という時間帯もあって店員が気にすることもないし(もしかしたら陰口など言われているかもしれない)、入店してくる客は目当てのものを購入するとすぐ店から出ていってしまうから徘徊人である自分のことなど視界に入っていない。深夜という時間は多少風変わりな人物を許容する力を持っている。背広を着た人物が、自分と同じように徘徊していたのを何度か目撃した。まあ、仲間はいるということである。雑誌コーナーに仙人のような人物がいた。ページをめくりもしない。手に持っているだけである。こういうのもアレだけどこの人、通勤時になんとなく店内をチラ見したとき、同じ場所に立っていた気がするな。
だから徘徊ぐらいどうってことないのである。そういやゆでたまご、明日の朝食す用のゆでたまご買っとこう、と思ったので、徘徊を中止し、手に取りレジに持っていった。すると、そのときに、ホットスナックの前に見覚えのある顔が見えたのだった。
HIKAKINの顔だった。で、よく見てみると、神妙な表情で腕を組んでいるHIKAKINがパッケージに印刷されたカップラーメンがいっぱい置いてあった。「みそきん」と書いてある。
あれ? これ本物? と一瞬思った。みそきんって買えなかったんじゃなかったっけ? めっちゃ転売されていなかったっけ?
これ深夜だからいっぱいここに置いてあんのかな。翌日、日中に来たらもうないのかなあ。まあ、とりあえず、「みそきん」も手に取り、「あ、これも」と言ってわたしはレジに差し出した。何円だったかは忘れた。ほとんど無意識みたいな状態だったから。
その日は帰宅し、みそきんを楽しみにしながら寝た。
翌日、起きて、ゆでたまごを食し、パソコンに向かい、執筆に向き合おうとエディタを開いたが、結局頓挫し、1文字も小説を書けないままここ最近おもしろくてしょうがない読書へと逃避してしまった。
小説を書けない。AIもあるのにこれはどうしたことだろう。「書けない」なんてことはないだろう。ほんとうにそうだ。
でも書けなかったんだからしょうがないのである。普段だったら失意のうちにそのまま外出するまで横になって寝込むところだったが、今日の自分にはみそきんがある。
意気揚々と、みそきんにお湯を入れて、できあがるまでの時間を待った。その時間はただみそきんのことを考えていた。
勘だったけど、もう出来上がったんじゃないかな、と思ったから、ペロッと蓋を剥がした。湯気が一気にただよってきた。匂いは、ふつう。とくになにも感じなかった。そのときは、スープを飲んで味を確認するとかしないで、まず麺からいった。箸で麺をひと束つかんで、豪快にすすった。もぐもぐして、味をしばらく吟味してみる。
うーん。あれだな。ふつうだ。おいしいけど、すみれの方がおいしい、と思った。
麺はおいしいなあ、確かに。麺はおいしいです、と最終的な論評を下し、身体に悪いと思うのでスープは残して、完食とした。
それから椅子にもたれてみそきんのことは忘れた。小説が書けなかった失意がちょっとずつよみがえってきた。完全によみがえらないうちに家から出ないといけない時間になった。
玄関から出て、なじみの道を歩いていて薬局の付近を通り過ぎたあたりで、腹に怪しげな感覚がよぎった。怪しげな感覚とは、膨満感である。際限なく腹の中が拡張していっている感じがした。その場で立ち止まり、意味もなく背後をふりかえった。いやー、このまま帰ったら、アレだな、間に合わないな。それで、数歩進むも、どんどん膨らんできているような気がしてくる。息ができない。立ち止まった。またふりかえった。いやー。ちょっと来た道を戻る。でも、と思って数歩進んでみるが、また息ができない。立ち止まる。みたいな行動を繰り返し、出勤不可能と見たので、家に帰った。勤務先に連絡を入れた。「お腹痛くなったので、遅刻します、1時間ぐらい。すんません」と言った。1時間ベットの上で横になっていたら、何事もなくなった。何事もなくなったのを確認したので、出勤した。体調が急変した理由は、不明である。寝不足でジャンクなものを食したせいかもしれない。
昨日のコンビニに今日も寄ったら、みそきんはもう売っていなかった。だからやっぱり買っておいてよかったのである。